老化・病気のカギを握る 命の回数券”テロメア”-③

人はなぜ老いるのか、その謎を解く鍵がテロメア?

 

テロメアが短くなりますと、細胞はやらなければいけない仕事をさぼります。
例えば皮膚の細胞はコラーゲンを分泌して、皮膚に張りを作るわけですけれども、テロメアが短くなってしまいますとそれをしません。
そのため、年を取るにつれて皮膚がたるみ、しわが出来たりするのです。

テロメアは、ストレスによって縮まって、さらには病気にも関係しているという報告がありました

例えば、お酒をたくさん飲んだり、たばこをたくさん吸ったりしているとします。

たばこをたくさん吸うと、のどや肺の細胞のテロメアが短くなっていきます。
本来やるべき仕事をしないため、だんだんと息が苦しくなり、場合によっては肺がんなどになります。

以上のように、テロメアの短小化はそういった恐ろしい病気につながると考えられます。

テロメアに関する新たな研究成果が次々と報告されるきっかけは?

ブラックバーン博士たちによる、ある発見です。
従来、細胞の染色体の端にあるテロメアは、年を重ね、細胞分裂するたびに短くなっていく一方だとされていました。

その常識を覆したのが、ブラックバーン博士たちが発見した「テロメラーゼ」という酵素です。
テロメラーゼは、テロメアが短くなるのを遅らせたり、伸ばしたりする働きがあります。
これによって、細胞を若返らせる可能性が出てきて、見事ノーベル賞を受賞しました。

そして今、どうすればテロメラーゼを増やし、テロメアを伸ばすことができるのかに関する研究が進んでいます。

“テロメアをのばす”習慣とは?

がん患者のグループにあるプログラムを実践してもらったところ、テロメアが実際に伸びという報告があります。
そのプログラムとは、4つの要素から構成されていました。

 

1. 有酸素運動
筋トレよりもジョギングなど、軽めの有酸素運動を週3回程度続ける方が有効

2. 野菜中心の食事
食事は、野菜に加えて、魚や海藻などもいいとされています。和食もお勧め

3. 友人やパートナーとの良好な関係を保つこと

4. 7時間以上の睡眠

 

「愛情は大切です。孤独で気分が沈んでいる人はテロメアが短く、3倍以上も病気になりやすくて、早死にする傾向にあります。」

「画期的な発見でした。シンプルな習慣の変化が、これほど大きな効果をあげるなんて、皆なかなか信じませんが、本当です。“細胞レベルで若返る時代”の始まりです。」

by予防医学研究所 ディーン・オーニッシュ所長

めい想も若さを維持するのに良いということだが、これは予防医学の観点からはどういう理屈なのか?

意外に思えるかもしれませんが、近年、めい想は真剣な科学の対象になっています。
現状ではメカニズムは不明ですが、めい想はストレス軽減など、健康に効果があるという報告が増えてきたので、最近、病院や一般企業などでも、めい想を取り入れるところが増えてきています。
今回おもしろいのは、そのめい想が細胞レベルでも効果があるということが分かってきたということです。

友人やパートナーとの関係、社会的な状況も関係するのは?

これも本当に面白いのですが、21世紀の予防医学の大発見が孤独はたばこと同じくらい健康に悪いかもしれないということです。

日本でも、つながりが豊かであればあるほど、健康で長生きだという報告をされています。

運動とか、めい想というのは、自分でやるものですが、人と人との関係というのが、まさに細胞レベルで影響する、これは本当におもしろい知見だと思います。

テロメアというのは、私たちの日々の生き方に関係している可能性があるということになります。

 

最後に

人生100年時代が目前に迫って、長い後半生を健康に送るということは、社会全体の大きな課題です。
運動、食事、人間関係、最新のテロメア研究は、日々をよりよく生きることの大切さを改めて私たちに問いかけています。

 

石川冬木さん(京都大学大学院教授)/テロメアや老化について研究している。

全文はこちら

クローズアップ現代