老化・病気のカギを握る 命の回数券“テロメア”-②

「健康長寿を手に入れるための重要な要素。それはテロメアです。病気にかからず、

生産的に人生を楽しめる年数に、テロメアという部分が関わっているのです。」

By ソーク研究所 エリザベス・ブラックバーン博士

テロメアとは

私たちの体を形成している37兆個の細胞。
これらは、生きているかぎり分裂、入れ代わり続けています。

例えば、皮膚の細胞。
活発に分裂を繰り返し、若い細胞を生み出し続け、1、2か月で新たな表皮に入れ代わっています。
この細胞分裂に関わっているのが、細胞の染色体の端にあるテロメアです。
テロメアの正体は、塩基という化学物質。

細胞が分裂するたびに少しずつ数が減り、テロメアは短くなっていきます。
生まれた時は、およそ1万5,000ほどとされますが、35歳でおよそ半分に減少。
6,000を下回ると染色体が不安定になり、さらに2,000になると細胞がこれ以上分裂できなくなり、「細胞老化」と呼ばれる状態に陥ります。

テロメアが減ると新たな細胞ができなくなるため、命の回数券とも呼ばる所以です。

広島大学が立ち上げたベンチャー企業が個々のテロメアの長さを分析した結果、35歳相当の長い人から83歳相当の短い人まで、大きな個人差が出ました。

テロメアの個人差はストレス!?

アメリカの最新の研究によって、心理的ストレスがテロメアの減り方を早めていることが解明されました。

家族を介護している女性たちを対象に調査を行ったところ、介護の年数が長いほど、テロメアが減って短くなっていました。
さらに、一般の人も集めて面接実験を行いました。
面接官があえて無愛想な態度を取ってストレスをかけ、それをどう感じたか面接の前後に聞き取りました。
すると、あるタイプの人たちだけ、テロメアが特に短かったのです。
面接が始まる前から強いストレスを感じる心配性の人々です。

 

「悪いことを予測してしまうタイプ、つまり、悲観的な人は、ストレスに反応しやすく、健康に悪影響があります。

10代の若者や健康な人でも、悲観的であるほど、テロメアが短いことがわかったのです。」

By カリフォルニア大学 サンフランシスコ校 エリッサ・エペル教授

癌、認知症とテロメアの関係性とは

テロメアが減少し短くなると、深刻な事態が起きうることが明らかになってきました。
テロメアと、がんとの関係を研究している、相田順子さんによると、なんと、40代以降のがんの主な原因がテロメアの減少にあるといいます。

食道がんの患者から、がん細胞の近くにある細胞を取り出し、テロメアを調べた結果、
テロメアが年齢平均より大幅に減り短くなっていたのです。

 

「テロメアが短くなってくると、染色体がどうしても不安定になってくるので、そうすると遺伝子の変異が起きやすいという状態になります。

がんになりやすいというふうに考えられます。食道がんのほかに、口腔のがん、すい臓がんですね、皮膚がんもそうです。」

By 東京都健康長寿医療センター 研究所 相田順子副部長

 

さらに、テロメアと認知症などとの関係についても、新たな事実が分かってきました。
2,000人の脳の画像とテロメアを分析したところ、テロメアが減って短くなった人ほど、脳が萎縮していたのです。
特に、記憶をつかさどる海馬の萎縮が顕著でした。

「海馬が縮小すると、認知症のリスクや脳機能が衰えるリスクが高くなると考えられます。テロメアの短縮が、脳の老化に深く関係しているのです。」

By ハンティントン医療研究所 ケビン・キング医師

 

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クローズアップ現代