がん治療 体とともに心のケアで自殺予防を

今や日本人の2人に1人がかかるとされるがん。がんの治療技術の発展とともに、働きながら治療を続けるケースも増えている一方で、身体だけでなく、心も深刻なダメージを受けることが問題になっています。

がんを患っても心を健康に保ち続けるための方法について、国立がん研究センター中央病院の内富庸介支持療法開発部門長に聞いてみました。

 自殺リスクが24倍に 心の激痛ともなうがん

がんは死因第1位の病気であり、症状や治療の副作用によるつらさについては、多くの人が知るところです。しかし、“心の激痛”をともなう病気であることは、あまり知られていないのではないでしょうか。

20年間にわたって行った追跡調査によれば、がんの診断後1年以内に自殺をするリスクは、がんではない人の24倍に及びます。

警察庁の調べによると、自殺の理由の第1位は「健康問題」で1万1014人(2016年)、そのうち、身体疾患ではがんが最多であるのではといわれています。先述の追跡調査を基に推計すると年間1000人以上が診断後1年以内に自殺しているという計算になります。

自殺の背景にあるのは、うつ病をはじめとする心の病気です。これを裏付けるデータが、11年、医学誌「ランセット・オンコロジー」で発表されました。全世界のがん患者を対象に行った調査によると、深刻な不安症状なども含めるとうつ病に罹患していた人は3人に1人にのぼったのです。

心のケアをしながら最初の1年を乗り越える

そうなる前に、がんの治療、または看病と並行して心の治療を受ける必要があります。

早めに治療すれば、うつ病も軽症~中等症で済む場合は少なくありません。がん年齢とされる40、50代以上の方々は人生経験も積んでおり、困難を乗り越える知恵、ストレスに対処する能力をちゃんと持っているからです。

もう一つ大事なのは、「実はがんなんだ…」と、苦しい気持ちを打ち明けられる相手を普段から作っておくことです。薬の副作用や体調の変化があっても、理解してくれる人がいれば安心して生活することができます。職場に一人、趣味の仲間に一人、近所に一人、といったように、様々な場に理解者を作っておきたいものです。

 

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